村田沙耶香「コンビニ人間」2016年11月01日 00:28

最近の芥川賞といえば、私にはとてもついていけない話が多くて敬遠しているが、友人の「おもしろいわよ」という声に誘われ、その彼女に「文芸春秋」を借りて読むことした。
まず死んだ雀をヤキトリにして食べたい、と母親のところにそれを持っていく小学生の主人公が出てきて、こりゃまた私にはダメだな、と思う。しかし成人してコンビニのパートで働くことだけが生きがいの36歳になった主人公に、コンビニの仕事なんて、底辺の人間がやることだ、とうそぶく男が登場し、挙句の果てに同居するはめになるぐらいまではなかなか面白く読み進んだ。ただそのあとがいけない。
こんな漫画みたいな成り行きの話、芥川賞に相応しいのだろうか。芥川賞といえば、過激、逸脱、荒唐無稽、それらのどれか一つがいまの社会のアイロニーとして出てこなければいけないのだろうか。石川達三の「蒼氓」、井上靖の「闘牛」みたいな、普通の人のスリリングなお話がまた出てくるようにならないかなあ…