「ロンドンオッカケの旅第3弾」「ホフマン物語」のテーマは?2016年11月18日 18:41

今年の春ごろだったろうか、NYのMETライブビューイングの「ホフマン物語」を観た。ストーリーは変てこだが、なんといってもハンプソンの悪役振りがおもしろい。そして音楽が素晴らしく、ことに有名な「舟歌」や美しい合唱、これを今度は生で観たいと思っていたところ、ロンドンのロイヤルオペラハウスでほとんど同じキャストでやることが判明、ステントマンを誘ってみた。彼は、子供のころ「ホフマン物語」の映画(たぶんバレエ映画)の予告編を見、人形のオランピアの首がとれて転がってしまうシーンが忘れられず「あれはどんな話だったのだろう?」とずっと思っていたそうだ。そんな興味があったようで、すぐ「いきましょう」ということになった。
そしてロイヤル・オペラハウスでの「ホフマン物語」、MET版とほとんど同じ歌手なのに、プロダクションも、話の進行もまったく違ったものだったのでびっくりした。何よりも、人形のオランピアの動きが面白い。オペラであんなに客席から笑いが出たのは初めての経験だ。
期待のハンプソンは最初の酒場のシーンから登場、なかなかのダンディぶりだったが、途中から人形のオランピアを生身の人間のようにつくってホフマンをだます役では、ツルッパゲの悪人になって大活躍、多いに観客を笑わせた。
ホフマン物語のテーマは何か? 私はただ音楽がきれいだし…ぐらいの感想しかなかったが、小さい頃から「なぜ人形の首が飛んでいるのか」という疑問をずっと持っていたステントマンの感想はなかなか哲学的である。ホフマンが経験した三つの恋の実態は、外見だけで心がない人形のオランピア、愛よりダイヤを選んだ高級娼婦のジュリエッタ、ホフマンを愛するより自分の芸術を優先したアントーニア、この三つでつまり女なんてみんなこんなものさ、という経験。そしてすべてを受け入れた親友ニクラウスが、実は芸術の精ミューズの化身で「人は恋によって涙によって大きくなる。詩人として生きなさい」とホフマンを諭す…というようなテーマを彼はちゃんと理解し納得しながら観たそうだ。なんだか、意外な夫の姿!
もっとも、小さい頃から映画づけだった彼の記憶にはびっくりすることが多い。今回もロンドンの宿舎がWaterloo Bridgeの近くにあったことで、大昔小学生の頃に観たヴィヴィアン・リーとロバート・テイラーの「哀愁」の話を聞かされた。死んだと思っていた恋人が戦地から帰還した時、女は娼婦に身を落としていたためWoterloo橋に身を投げてしまう話だそうだ。「そんな小さい時に娼婦なんて職業は分からなかったでしょ?」と聞いたら「分かったよ」ですって、ほんとかいな?
とにかく、期待した以上の「ホフマン物語」で大満足でした。 写真は楽屋口のTH。