『蜜蜂と遠雷」2017年04月03日 21:34

話題の直木賞作品「蜜蜂と遠雷」、芥川賞作品が「文芸春秋」で読めると同じように「オール読み物」で読めると思って購入してみた。しかし、途中までしか載っていないとは! 改めて本を買う気も失せていたが、気をとりなおしてKindle版を購入して読んでみた。
感想を一言でいえば、「なんて大げさな比喩や表現が多い小説」という感じかな。Kindle版の本の読み方にも慣れないせいもあってか、途中から文章を読み続けるのに苦労した。
ピアノコンクールの話は、小説の舞台としてなかなか面白そう、作品に出てくるピアノ曲、中には私にもメロディが分かるものもあり、どんなストーリーが展開されるのかと楽しみと思ったのだが、自宅にピアノもない少年が驚異的な演奏をするというあたりから、読み進むのが苦痛になってきた。
音楽に通じているとは言えない私でも、素晴らしい演奏に出会って感動し、曲が映像化することは分かる。しかしこの作者の描写にはついていけなかった。
あまりにも大仰な表現が続く、漫画的な小説だと思ったけど、絶対音感を持つ本当のピアニストが読んだらどんな感想を持つか、聞いてみたいものだ。

川井家の枝垂れ桜2017年04月09日 23:19

多摩市の天然記念物に指定されている枝垂れ桜です。樹齢200年という立派なものです。3月31日に撮影、染井吉野より1週間ぐらい早く満開になるようです。

METライブビューイング『椿姫」2017年04月13日 22:50

久しぶりのMETライブビューイング「椿姫」を観に友人を誘って出かけた。ネトレプコ主演でだいぶ前に話題になった現代版舞台のプロダクションだがお父さん役のハンプソン以外は初めての歌手(ヴィオレッタはソニア・ヨンチェーヴァ、アルフレッドはマイケル・ファビアーノ)で、あまり期待はないまま出かけた。しかし、この二人の歌手の歌唱力、なかなか素晴らしかったと思う。
ヒゲをつけてスーツ姿に帽子までかぶって登場したハンプソン、インタビューで「お父さん役のメイキャップをするのが早く簡単に出来るようになった」と言って笑わせていたが、実年齢と役のそれがピッタリというところだろう。友人いわく「貫禄だわね」。
「椿姫」のアリアや二重唱、みんな素晴らしいものばかりだけれど、特に二幕目のお父さんとヴィオレッタの二重唱はことさら美しい。また、死を前にしての若い二人のデュエット「パリを離れて」のメロディは帰り道ずっと耳に響いていた。
原題の「ラ・トラヴィアータ(道を踏み外した女)」が、森鴎外の訳したやはり高級娼婦をモデルのデュマ・フィスの小説「椿姫」と重なって、日本では「椿姫」が定着したそうだが、違和感がある題名だなといつも思う。
しかし、かといって「道を踏み外した女」という意味の日本語、これという言葉はないかもネ…

黒田博:「愛すべきモーツァルトオペラのバリトン役」2017年04月21日 16:49

友人に誘われて、代々木のアトリエ・ムジカに出掛けた。小さな音楽スタジオの中で、バリトン日本第一人者のモーツアルト・オペラ・アリアを楽しめる醍醐味もさることながら、数々の出演の経験者ならではの裏話が大変面白く、素晴らしい午後のひとときを過ごすことができた。
印象深い話がたくさんあったが、その中でもモーツアルトの才能について、「ドン・ジョヴァンニ」は彼の作品の中でも格別のものである。ほかの彼の作品は、野の花が自然にどんどん咲いて、「あれもきれい、これもきれい」という感じに素晴らしいものばかりであるが、「ドン・ジョヴァンニ」はモーツアルトが特別に力を込めて生み出した傑作で、他の作品とは別格のものである、というような話をおもしろく聞いた。
バリトン歌手にとって「ドン・ジョヴァンニ」を歌うことは特別の意味があり、黒田氏にとっては最後の「地獄落ち」のシーン、悲鳴をどうやるか、うまく出来るか否か、が一番大事で、うまく出来た時は最高に気持ちがいいそうだ。
ユーモアたっぷりな貴重なお話と迫力満点のアリア、誘ってくれた友人に感謝。

未來よこんにちは2017年04月28日 23:36

何の予備知識がないままに、チケットをいただいたので、渋谷・文化村のル・シネマに出かけた。この劇場はポップコーンを食べたり飲んだりは禁止だからカシャカシャする音や臭いが皆無でうれしいことだ。
音楽が流れることもなく淡々と続く画面を観ているうちに、これはまるで昔好きだったエリック・ロメールの世界じゃないか、と思う。後でチラシをみたら、監督はロメールの後継者と称されているミア・ハンセン=ラブという女性だそうだから、私がそう思ったのも無理はない。
とにかく、これぞフランス映画という魅力に溢れている。老いた母に振り回され、学校でもデモや学生たちの抵抗に遭いながらも真面目に教師を続けている哲学者の主人公、過去には重みがあった哲学者としての地位もいまや編集者からも軽んじられ、同じ哲学者の夫は浮気をしていることが判明,唯一の慰めは立派に彼女の理想にそって自立した一人の教え子だ。
いろいろな哲学者の名前がでてきたり、幸福論等の難しいテーマが語られるが、そんなことは分からなくても映画を理解するのに問題はない。老人問題、世代による価値観の変化、夫婦の危機など、老いに伴うどこの国にでも共通なテーマが淡々と語られる。 そして突然のシューベルトの歌曲、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの歌声が響きわたる。だいぶ若い時の声だろうか、画面にぴったり合ってことのほか美しい。
こういう映画はまずDVDなどで観たら良さが分からないままに終わってしまうだろう。映画館で多少眠くなる時があっても観続けてこそ価値が分かる映画だと思った。主演のイザベル・ユベールがいい。
ちなみに、この映画の上映館は渋谷の文化村と称されるところの「ル・シネマ」という劇場、久しぶりに井の頭線の「神泉」で降り、駅前のパン屋でお昼を済ませ、劇場に向かうのに「文化村はこっちで良かったわよね」とパン屋のお姉さんに聞いたら「ブンカムラ?」と怪訝な顔をされ、隣にいた女の子に聞いたが、その子も「シラナーイ」ということだった。わずか400mぐらいのところで働いている人間が知らない「ブンカムラ」、東急の人はどう感じるだろうか。