「パリに住んだクリスマスとお正月」(13)大晦日2020年01月02日 04:34


 いよいよ31日、シャンゼリゼ通りの凱旋門でのカウントダウンを見ようとバスに乗る。といっても近くは通行止めになっているからその近くまで行けるバスを探す。<br>
予定と違ったバスが来た。でも目的のバスと同じ方向だ。後ろの降車口から当然のように乗り込む。<br>
 混んだバスの中で「Happy New Year!」と大声で何回も何回も携帯に向かって叫んでいる東南アジア系のおばさんがいる。出稼ぎのヴェトナム人といったところだろうか、故郷の親戚一同が新年会をやっているのだろう。時差でもう故郷は新年なのだ。<br>
 エッフェル塔のそばへ来ると運転手のアナウンスがあり、皆ここで降りてくださいということらしい。大晦日イベントのため凱旋門近くは乗り入れ禁止とのこと、仕方がない。<br>
 さてさて、まだ凱旋門までは3キロ近くもある。行くのも帰るのもだいぶ難しそう。仕方がないから、凱旋門の代わりに目の前にそびえ立つエッフェル塔のライトアップを見てから帰ろうということになった。そういえば息子に、投函しておいてと託してきた年賀状もエッフェル塔のイラストを入れたことを思い出し、ちょうどいいな、と自画自賛した。<br>
バスに乗り無念に思いながらアパルトマンに戻る。深夜、遠雷の如く、花火の音と音楽が5キロ近く離れた凱旋門から聞こえてきた。

パリに住んだクリスマスとお正月」(14)新年おめでとうございます!2020年01月02日 07:03

 「主婦が何もしないお正月」にあこがれてこんな旅をしているはずなのに、冷蔵庫の中にはお雑煮の材料は皆無、チーズと生ハムそしてりんごぐらいしかない状態がいやに寂しさを呼ぶ。パン屋もカルフールも休み、仕方がないので自宅から運んで来たお餅をチンして海苔を巻いて食べた。<br>
 あと1週間でこの旅も終わるが、結局ゼネストは未解決のままこの国を去ることになりそうだ。予定をだいぶ変更せざるを得なかったが、一方、貴重な経験もできたような気がする。<br>
 今日は、昨日の予定行程、ライトアップのシャンゼリゼに行くことができた。赤色のイルミネーションはあんまりシャンゼリゼには似合わないような気がしていたが、こうして道の真ん中からコンコルドまでを見据えると、赤もまた特別な色になったような気がしてくる。世界一美しい「通り」は、何でも美しく替えてしまうのだ。<br>
 「ジョルジュ・サンク(George 5)」の駅から地下鉄1号線に乗る。今回の旅で初めての地下鉄は無人運転されているそうだが、改札口はあってもなきが如し、皆ドンドン支払いもせず改札を通って行く。バスと同じく無賃乗車OKだ。フランスってずいぶん豊かなんだろうな。何かにつけて律儀な日本とはだいぶ価値観が違う。<br>
 ところで、カルロス・ゴーンの日本脱出劇はびっくりした。こちらのニュースでもトップニュースだ。今のところ事実だけを報道しているようだが、長期勾留に対して日本の司法を批判する感じだったフランスの論調は今後どうなって行くのだろうか。それにしても、楽器の箱の中に隠れてって本当?

「パリに住んだクリスマスとお正月」(15)ルーヴル美術館2020年01月04日 04:54

朝、夫に付き合って近くのブーランジェリー(パン屋)へいく。8時ごろだが、カフェも果物やもスーパーのカルフール も早くも営業開始の準備をしている。正月の2日の気分はパリには存在していない。しかし、ゼネストは誰も先行きが予測できないといい今日も続いている。<br>
 12時半にルーヴル美術館に予約入場券2枚を買っているので、バスで出かける。今日も満員だが乗客の忍耐とお互いを助ける精神は見事というしかない。日本であれば怒号の一つもあっておかしくない状況でも、皆、「パルドン」「エクセキュゼモワ」は忘れない。何とか12時半にルーブル の玄関口ピラミッドについて、300メートル以上並んだ入場待ちの列に驚いた。<br>
 我々はメールでの予約チケット保有者の列に並ぶ。セキュリティチェックだけなので、15人くらいしか並んでいない。ちょっと優越感に浸ったのも束の間、地下の広場に行くとものすごい人がいる。しかもダノン翼には更に入場者チェックがあり、アイフォン にダウンロードしたはずの入場券が表示されず、あっちに行ったりこっちに行ったりで大忙し。ようやく入場すると、暑くて着ていたコート、帽子、手袋を外し、サモトラケのニケ、奴隷などの必見といわれる彫刻を見る。<br>
 レオナルド・ダ・ヴィンチの特別展会場は別途予約がいるので、見られないと思っていたモナリザが何と常設展にあり、前はスマートフォンをかざす人の山ができている。更に、ドラクロワの民衆を導く自由の女神やアラブの女性の絵、あるいは、ゴヤの絵、ルイダヴィッドの絵を見たあたりで、老夫婦のエネルギーは枯渇して、もう美術館はいいと、サントノレ通りへと逃れでる。<br>
 また、野田岩では芸がないと思い近くのワインバーへたどり着いて暫し食事と休憩で時を過ごし、ピラミッド近くの95番バス停に20人を超える人たちと並び、2台目のバスにようやく乗り込み、ミシェル・デブレというやや離れた停留所で降りて、やはり左岸の方がいいわい、と思いつつ仮の我が家に帰り着いた。

ピラミッドの周りにずっと行列が…

「パリに住んだクリスマスとお正月」(16)パリジエンヌ2020年01月04日 06:58

 パリ滞在もあと4日となった。ルーブルのすごい人の波にすっかりエネルギーを吸い取られてしまった我々、その次の朝、今日は観光客としてはできないことをしましょうということで意見が一致した。
まずお土産にするチーズの予約をしに近くのチーズ屋さんに行く。嬉しいことに、日本人の女性が出てきていろいろ説明してくれる。それにしても、フランスのチーズって、どうしてこんなに美味しいのだろう。
 さて午後の私は美容院に行きたいのである。髪がだいぶ伸び、白髪の部分がだいぶ露出してきている。アパルトマンの近くにあって、地元の年配の女性が利用しそうな美容院を前から目をつけていた。
 「パリで美容院に行く」というテーマでは一つ苦い思い出がある。今から15年前、やはり長期旅行の折、シャトレにある美容院に面白半分に飛び込んで「少しカットしてください」と頼んだのである。すごく若い美容師が「フランス語ができない東洋人」が来たというのですっかり興奮(?)して、私がフランス語で「カットしてください」と言っている(?)のに、「英語だ、英語だ、英語ができるのは誰だ?」というような感じで騒いだのである。
結局私の拙いフランス語でヘヤーカットは終了したけど、作業中、お湯はポタポタ首の周りに落ちるし、結果は注文とはおよそかけ離れたヘヤースタイルになってしまったのだ。
 それに比べて、今回のパリの美容院では、「私のズボンに染料がくっつかないかしら?」というような、体をカバーする布の使い方などに不安はあったが、美容師さんのハサミ捌きは実に見事、出来上がりも上々、夫に「パリジエンヌになったね。特に後ろ(!)がいいよ」と言われた、

「パリに住んだクリスマスとお正月」(17)テリーヌ2020年01月06日 05:37

 
フレンチの前菜といえば「テリーヌ」は人気の高い料理だと思う。我が家(!)からすぐ近くの人通りの少ない路に美味しそうなテリーヌを売っている店がある、と私は信じていたのだが、夕食にぜひ食べたいと買いに行ったら、どこにもテリーヌ屋さんなんかないではないか。路を間違えたに違いないが、どこをどう間違えたか、全く見当もつかない。 
 おかしい、おかしい、そんなことをブツブツいいながら歩いていたら、サンジェルマン大通りまで出てしまった。有名店らしい店を見つける。店頭のショーケースに、フォアグラのテリーヌが数種類並んでいて、お客さんで賑わっている。どれもすごく高額だ。フランスにおけるフォアグラはトリュフと並んで日本で言えば松茸みたいな存在だと改めて感心する。
 我々二人はオマールの入ったものを4.5センチ幅ぐらいに切ってもらう。29€と思ったよりずっと高いが、きっと美味しいことだろうといそいそと帰宅する。
 しかし食べて、びっくり。真ん中に確かにオマールが入っているが、周りはさっぱり味がしない豆腐のおからのような歯応えで期待は大きく裏切られた。
 私が見つけた幻のテリーヌ屋さん、あそこのテリーヌはもっと美味しいに違いない。