「明暗」と「続明暗」2016年03月09日 00:22

水村美苗の大ファンで、本箱にはそれを並べてあるのに、彼女のデビュー作「続明暗」を読んだ記憶がないことに気付いた。きっと漱石の「明暗」を読んでいないためであろうと、まずそれを読むことから始める。
えっ、漱石の小説って、こんなに読みにくかったかしら、というのが、まず、はじめの感想である。話の大筋は、恋人に捨てられた男が、まだ彼女に未練を残しながらも結婚したため、女への未練と、なぜ自分を捨てたのかとその理由を質したいという気持ちから逃れられない。その結果、結婚して間もない妻も、夫との関係がうまくいかないことに悩んでいる。
この二人の人物の性格の描写や、場面、場面の情景描写が実に細かく丁寧に描かれているのだが、それを読み進むのがけっこうしんどい。旧仮名遣いは出てこなかったが、ふり仮名がなければ読めない漢字もたくさんある。明治の日本を感じながら字を追っていくという感じである。
そして、話がいよいよ大詰めというところで、漱石は他界した。続編を、と思う作家がいるのも無理ないと思う。実際に続編はこのほかにも何作かあるらしい。
そして水村美苗の「続明暗」、まず漱石を忠実に真似た素晴らしい文章力に感心した。少女時代に遠く日本を離れ、アメリカでの孤独を慰めるために自宅で漱石全集をいつも読んでいたという水村美苗の歴史をあらためて思い、さぞ読み込んでいたのだろうと感じ入る。
そして物語の展開は、だんだんと水村美苗風に「面白くなくては…」という感じに進んでいく。私の読書スピードは、はるかに「続明暗」のほうが速かった。

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