「海賊とよばれた男」と「ホワイトエレファント」2014年01月15日 15:15

友人に借りた2013年度本屋大賞「海賊とよばれた男」をおもしろく読み終わったら、その友人が今度は、その娘の書いた自伝的小説「ホワイトエレファント」を貸してくれた。「海賊・・・」のほうの主人公は、丁稚から身を起こし、出光興産を立ち上げた人物出光佐三をモデルにした立身出世物語で、社員にも家族にも尊敬され慕われる男の話を、ちょっと美化しすぎるとは思ったが、それなりに面白く読んだ。 さて、「ホワイト…」のほうはというと、娘の側からのあまりにも否定的な父親批判にまず驚く。父親だけでなく...、母親、姉3人が、非常識な、お互いを否定するだけの人間関係の中に生きているような描き方である。作者自身がそうであったように、主人公はロスアンゼルスで抽象画家であるサム・フランシスと結婚している。父親に勘当同然にあつかわれ、夫だけが頼りという状態でのロスでの生活ぶりが描かれるのだが、人種差別の体験しかり、NYに画家を目指して一人で暮らす姉との確執しかり、とにかく暗い人間否定の話ばかりが続く。そして、その芸術家としての成功を父親からも期待されている姉が、これまたまたひどい人間に描かれていて、読み続けるのがしんどかった。 娘に、こんな自伝的小説を書かれるとは、いくら男尊女卑の傾向のある出光氏でも思ってもみなかったことだろう。しかし、出光美術館にはサム・フランシスの抽象画がたくさん展示されているそうな。ますます「ホワイトエレファント」を書いた作者の意図が分からなくなった。