棚からボタモチ2013年03月03日 22:25

以前、この欄で紹介した、ガラス工芸家の岩崎恭子さんの一輪挿しをドレッシング入れにした件、写真をご覧になったお母様が「一輪挿しはお花を入れたほうが綺麗ですよ。ドレッシング入れには、こちらを使って」とコルク付きのステキな瓶をプレゼントしてくださった。これは恭子さんの失敗作で、お母様のところにあったものとか。こんなステキな瓶が失敗作だなんて、まさに「棚からボタモチ」といった心境だ。

ライフ・オブ・パイ2013年03月06日 22:22

以前、友人に勧められて買った原書の「Life of Pi」、5ページぐらいでギブアップしたままで、どんな話なのかずっと気になっていた。
映画化され、なかなか評判がいいし、アカデミー監督賞までとったとなると、何が何でも観にいかなくてならないと日劇まで出かけた。実は、近くのシネマコンプレックスへ出かけ、チケットと3D用のメガネも買ったあとで吹替え版と気がつき、キャンセルして帰ってきたいきさつがある。字幕版は夜遅くにしかやっていなかったのである。洋画をわざわざ劇場で吹替え版で観るな...んて考えられないことだ。
3Dというのは初めての経験で、最初はちょっとメガネをしていることに疲れたが、慣れるとそのすごい迫力に圧倒された。
ストーリーは、動物園の経営者一家が、インドからカナダに移住する航海中に動物もろとも遭難し、次男のパイだけが生き残るというサバイバル・ストーリーだが、救命ボートでシマウマ、オランウータン、ハイエナ、そしてやはり生き残ったトラと漂流するはめになる。美しく、そして恐ろしい海の光景が次から次へと展開する。
3Dの迫力が売り物の冒険映画と思っていたが、ラストに思いがけない展開が待っていた。この映画のテーマは何だろう? 何を言いたい映画なのだろうという疑問が出てきて複雑な気持ちで映画館を後にした。
高額な所得税から逃れるためにフランス人からロシア人になったジェラール・ドパルデューが船のコックとしてチョコッと登場したのには驚いた。

皇居三の丸尚蔵館「明治十二年明治天皇御下命「人物写真帖」展2013年03月10日 23:26

三の丸尚蔵館「明治十二年明治天皇御下命「人物写真帖」展
明治維新前後の志士の写真はいろいろ見る機会が多いが、有名な人物の若き頃の写真を見ることは珍しい。
NHK大河ドラマ「八重の桜」の松平容保役・綾野剛は本物に似ているとか、大久保利通や東郷平八郎はハンサムだわ、というような感想しかなかった私に対し、一緒に行った夫の感想は、以下のとおり。
「上野公園の西郷隆盛の銅像が、本人と似ていないという話はよく出てくるし、ウィキペディアの中にも、『公開の際に招かれた西郷夫人糸子が「宿んしはこげんなお人じゃなかったこてえ(うちの主人はこんなお人じゃなかったですよ)」と腰を抜かした』という話が出ているが、今回、弟の西郷従道や、従兄弟の大山巌の写真を見て、銅像の顔が本人に似ていないという話は本当なのだろうと思った」
「八重の桜」の人気もあってか、すごい混み方の展示会だった。

「世界で一つのプレイブック」2013年03月13日 00:19

映画のストーリーの予備知識がほとんどないまま、アカデミー主演女優賞を取った映画というので観にいった。そのジェニファー・ローレンス、そんな立派な評価が相応しいのかな、というのが素直な感想。妻の浮気騒動が原因で躁鬱病になり、精神病院から出てきた男と、やはり夫に死なれて自暴自棄になっている女とのラブストーリーに、ロバート・デニーロ扮するアメフト狂の父親の話がからむ。いくら精神を病んでいるとはいえ、ヘミングウェイの「武器よさらば」を読んで、その結末が気に食わないと、朝の4時にそれを窓を割って外に放り投げ、両親の寝室に飛び込んでわめく主人公や、夫を亡くした後、仕事の仲間ほとんどと関係を持ち、その中に女性も入っていたなどと告白するヒロインに、どうも感情移入できなくて、前半は睡魔と闘っていたが、最後のほうは、ばかばかしい話の終わり方としては、うまくまとまっていた。

METライブビューイングの「リゴレット」@新宿ピカデリー2013年03月13日 17:24

今回の公演、時間は1960年代、場所はラスベガスのカジノという斬新な設定で、ネオンがチカチカと舞台を照らし、最後に死に行く娘はキャデラックのトランクの中での熱唱する、といったようなすごい展開だったが、その大胆なチェンジが見事に成功して、素晴らしい舞台になっていた。
何より、歌手たちの見事なこと! まず主役のルチッチ、「ルチッチさん命」というFBの友がいるので、その魅力をぜひ解明したいと思って観に行ったという事実もあるが、彼の深みと張りのある伸びやかな声、こういうのをヴェルディ・バリトンというのだろう、と感心して聴きながら、オペラに精通した友人がファンになったことを納得した。またインタビューでは彼の誠実さがよく出ていたと思う。
それからソプラノのダムラウ、ちょっと若い時のメリル・ストリープに似た美人だが、これもすばらしい声の持ち主で聞き惚れた。ちょっとオデブで、本人もインタビューで「私を運ぶ人が大変」と言っていたが、太っているのもご愛嬌かもしれない。
写真で見る限り容貌は冴えないベチャワ、この人、動きがあるとなかなかステキだし、何より素晴らしいテノールで「女心の歌」に酔わせてくれた。
最近は、オペラを現代の話に設定することが多いようで、あまり感心できないものが多いような気がするが、今回の公演は、まったく違和感なく面白い舞台になっていたのは、ブロードウェイで活躍している演出家、舞台装置や衣装の担当の人たちの功績が大きいのだろう。