「そして父になる」を観て2013年09月25日 17:17

子供取り違い事件の映画といえば、むかしフランス映画の「人生は深く静かな河」という映画を観たことを思い出す。あの映画は、よりもっと貧富の差が激しい家庭での取り違いがテーマで、軽い喜劇タッチであったように記憶している。
今回のこの映画は、カンヌ映画祭で観客総立ちでの喝采をあびたそうだ。28日の公開日を前に、近所のシネマコンプレックスで先行上映というのがあるというのでいそいそと出かけた。
結論からいうと、期待が大きかったせいか、私は、カンヌの審査員のような喝采をするほどには感激しなかった。星をつけるとしたら4つぐらいかな。
たしかによく出来ている。福山雅治演じるエリートサラリーマン、多少セリフが棒読みのところはあるが、自分の生き方に自信を持つあまり子供への期待が大き過ぎるという役柄をうまく演じている。相手方のリリー・フランキーの電気屋さんは、なかなか演技派で観衆を惹きつける。子役もみんなうまいし、女優軍もまあまあだ。ただ、全体を通して、人生を変える一大事が発生したという緊迫感の描き方がいま一つが足りないように感じた。そして「他人を愛すること」が「血」よりも深いときもあるという事実を主人公の過去に絡めることはちょっと余計ではないかと思った。
是枝監督作品では「歩いても、歩いても」が大好きで、あの映画の中の樹木希林にはそれこそ何10分間でもスタンディングオベイションしたい気持ちがいまでもあるが、この映画の樹木希林さんは、少しの出演で残念に思う。しかしちょっとした後姿もちゃんと演技していることが分かるからすごい。最近は、健康がすぐれないと聞いているが大丈夫だろうか。
鑑賞の間、多少涙は出てきたが、鼻をかむほどではなかった。しかし後ろに座った女性が、途中からズーズー鼻をすすって泣いている騒音にはまいった。近頃は、まず近くにポップコーンやガサガサ音のする食べ物を持つ人が座りませんように、と祈ってから座るが、今回のように鼻ズーズーで悩まされることは珍しい。